彼は脳性麻痺だけど、脳性麻痺なだけで
ただ1人の暮らしを楽しもうとしている、
ただの24歳だ。
白を基調にした家具選びと、フェイクグリーン。
大きな全身鏡が気に入っていると言っていた。
親である私は、彼を自由にしようと、過ごしてきたつもりだ。
でもきっと、親がいるということは、
彼にとっては不自由でもあった、と思う。
親の概念が入るからさ。
うまく話せない彼にとってはなおのこと。
知らずしらず、私が決めつけてきたことも多かったのだろう。
それを彼は、黙って見逃してくれてきた。
彼を自由にしてやりたい。
彼を私から解き放ってやりたい。
だから私は応援したかった。
君は今から、君の人生を自分の足で歩いてゆく。
言葉にならない言葉を使い、君は伝えてゆくのだ。
自分が本当に大切にしたいことを。
ヘルパーさんが買ってきてくれた調味料を見た。
ああ、白砂糖じゃなくて、てんさい糖なんです。
味噌はその味噌じゃなくて、無添加味噌なんですよ。
と言いかけて、言葉をごくりと飲み込んだ。
もう、それを決めるのは私じゃない。
彼自身が決めることだ。
一人暮らしをさせるということは、
親自身が持つ執着を手放すことでもある、と知った。
彼は楽しそうだ。
彼は嬉しそうだ。
だから泣かない。私は笑って送り出す。
楽しんでこい!
たった一度の人生だ。
君よ、幸せになれ。
Enjoy Life!
All is Well !!